ニトの怠惰な異世界症候群

マンガ紹介

はじめに

追放と復讐はとても仲が良い。マブダチと言っても過言ではない。そのくらい私は「追放と復讐はセットでないといけない」と考えている。

異世界系マンガには「追放」というジャンルが確立されている。剣と魔法のファンタジー世界には、その世界のアイデンティティとなる「力」が存在する。主に「魔法の才」だったり「スキル」だったりすることが多い。

基本的に主人公というのは、世界をひっくり返してしまうほどの強力なスキルを持っているのだが、「追放」ジャンルでは「最弱」と呼ばれる力を持っているのがセオリーだ。それ故に、所属している組織、もしくは召喚された国に「追放」されてしまう。

そして主人公は「復讐」を誓うのだ。「俺を追放したことを後悔させてやる!」と。これが私の好きな「追放パターン」だ。しかし、残念ながら違うパターンも存在する。あきらかに理不尽で相当な仕打ちを受けて追放されたのに、主人公はそれを受け止め、復讐も進んで行うことはしない。そんな善人を描くパターンもある。そういう需要があるのだろう。中には善がメインのストーリが故に感動する話もある。しかし、私は圧倒的に前者の「復讐に燃える主人公」の方が好きだ。

今回私が読んだのは「ニトの怠惰な異世界症候群」という作品だ。

著 : まえはた / 蒸留ロメロ 「ニトの怠惰な異世界症候群」 1巻 より

この作品の雰囲気、めちゃくちゃ大好き!
私は作品の好きレベルを表現するとき、好きであればあるほど語呂がバカになるのだが、この作品は本当にめーっちゃ大好き!

根暗な主人公がネチネチした復讐心を抱えてオドオド旅するストーリーと、ダークで残酷な世界を表現している雰囲気がピッタリとシンクロしている。そして、何より最高なのが、「理不尽に突っかかってくる自称最強イキリ野郎が気持ち良いくらい無様にやられる」という復讐レベルだ。

これこれ。これが読みたいのよ。
「追放」と「復讐」の教科書のような作品だ。

そして、ただ鬱憤を晴らすだけの復讐ではなく、本当にファンタジー世界?って確認したくなるほど主人公の葛藤と感情が生々しい。もちろん復讐するので主人公は強くなるのだが、その強さの異常さの演出が上手すぎる。そういう感情の機微に至る描写も含めて、とにかく「復讐の演出」が最高なのだ。

私はあまりWEB小説の文体は苦手で読まないのだが、気になって原作を読みに行ったほどだ。案の定、この人の文章はとても読みやすかった。この辺は個人的にリズムが合うかどうか、など完全に主観なので参考になるかはわからないがリンクを貼っておく。

ニトの怠惰な異世界症候群(WEB版 / カクヨム)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054886041012

というわけで、「ニトの怠惰な異世界症候群」の簡単なあらすじと私が好きなイキリ制裁場面を紹介していきたい。

※ネタバレありなので、気になる方は注意してお読みください

とんでもないレベルの理不尽追放からの最強

著 : まえはた / 蒸留ロメロ 「ニトの怠惰な異世界症候群」 1巻 より

こちらが今作品の主人公の日高政宗(ひだかまさむね)のビジュアルだ。強そうな名前とは裏腹に、冒頭の場面では当然のように使いっ走りにされている。反抗することも、助けを求めることも、すべてを諦めているかのような表情をしている。

なぜ理不尽に命令されて、こんな顔をしているのか?

それは死を覚悟していたから。彼はこの日、屋上から飛び降りて自殺する。

そんなシリアスな冒頭を経て、主人公の政宗が死んだその瞬間、クラスごと異世界転移してしまう。その神の悪戯かのようなタイミングのおかげで、クラスのみんなは「転移」され、政宗だけは「転生」扱いになる。なんという居心地の悪い感情か。この作者はドSで確定だろう。

そして、クラスのみんなが次々に力を与えられる中、政宗は「最弱」と呼ばれる治癒職を与えられてしまう。

著 : まえはた / 蒸留ロメロ 「ニトの怠惰な異世界症候群」 1巻 より

そしてこの後、現実世界で政宗をいじめていた男子生徒サエキは言う。

ま 自殺するようなカスがなにかになれるはずないか

このセリフ、ヤバすぎるって。キャラだとしてもこれは言えない。しかし、これだけの悪役がいるからこそ、政宗の復讐の炎の強さが映えるのだ。

召喚した女もとんでもない悪役だ。何も選択する余地もなかったただ運が悪かった政宗を、これでもかと罵って、国外の絶対に生きては帰れない場所に追放する。もう、ただの殺人。

政宗は現実世界で理不尽い虐められ自殺したが、異世界に勝手に召喚され転生し、勝手に最弱のレッテルを貼られ、罵られて殺される。

ヤバいって⋯⋯。いろんな追放系あるけど、理不尽レベルが振り切っている。こんな扱いされた政宗はどう思うのか?

著 : まえはた / 蒸留ロメロ 「ニトの怠惰な異世界症候群」 1巻 より

お前ら全員
必ず⋯⋯
殺してやる!!

もうこの言葉しかないってくらいのセリフ。
最高の表情。

私はこの時、政宗の復讐を心から願った。もう一刻も早くこいつらに復讐してくれ!!と思っていた。それくらい読者のこっちも揺さぶられるほどの理不尽だった。

そして、飛ばされたダンジョンで何やかんやあって最強になる。どのくらい強くなったかというと、

著 : まえはた / 蒸留ロメロ 「ニトの怠惰な異世界症候群」 1巻 より

こいつがクラス最強のステータスだった優等生のイチジョウ。

著 : まえはた / 蒸留ロメロ 「ニトの怠惰な異世界症候群」 1巻 より

バカなの?もうトルコライスくらいバカじゃん。チャーハンとカレーとハンバーグとナポリタンも全部詰め込んじゃえ!、じゃないのよ。まぁ、好きだけども。

何はともあれ、私はこのステータスを見てワクワクした。復讐劇の幕が上がる音が聞こえたのだ。ただ、政宗の性格は非常に慎重なので、しっかり自分の強さやスキルを使いこなせるか試しながら進んでいく。その確かめる過程で突っかかってくる「イキリ理不尽ケンカふっかけ野郎」をボコボコにしていくが最高に気持ち良いので、今回は私のお気に入り場面をダイジェストで紹介したい。

話を聞かないイケメン強者の冷や汗

政宗が死に物狂いで脱出したダンジョンを出て、すぐにケンカをふっかけてきたイケメン。

著 : まえはた / 蒸留ロメロ 「ニトの怠惰な異世界症候群」 1巻 より

あきらかな強者のオーラを纏ったイケメン。名はジーク。武器は刀。この少ない情報だけで確信できる。弱い訳がない。そのジークは政宗の制止を無視して斬りかかる。

著 : まえはた / 蒸留ロメロ 「ニトの怠惰な異世界症候群」 1巻 より

攻撃を避けるどころか一瞬にして仲間を人質に取られるジーク。
話を聞かないイキったイケメンの冷や汗。最高です。

その後、一度は剣を収めたにも関わらず、「手合わせ」を勝手に仕掛けてきたジーク。何度も「やめろ」と忠告し手加減してあげたのに、まだケンカをふっかけ、しかも普通なら焼け死ぬほどの炎魔法を放ってくる。さすがの政宗もキレる。

ほんっとにどの世界でも話聞かない奴っているよなぁぁ!!!

これは政宗ではなく私のセリフだ。政宗と一緒に私もキレてた。

著 : まえはた / 蒸留ロメロ 「ニトの怠惰な異世界症候群」 1巻 より

魔法陣が⋯壊された⋯?
化け物か⋯!?

私が異世界転生したら一度は言われたいセリフの上位に入るフレーズ。あぁー、イケメンのタジタジちょー気持ちいい。

このあと、殺しにきた癖に殺されると分かったら虐められてるかのように命乞いする展開がある。
この時に政宗の生々しい感情も見どころ。

ギザ歯序列4位ヒャッハァァをワンパン

次の場面は2〜3巻に登場するレイドという男。この男の前にも主人公による良い感じの制裁場面はあるのだが、特にお気に入りなのはここ。

著 : まえはた / 蒸留ロメロ 「ニトの怠惰な異世界症候群」 2巻 より

この2巻の最後で登場するレイドという男。この1コマだけでかなりのイキリっぷり。とてつもない逸材の香りが部屋中に充満しているのがわかる。

「獲物を奪われた」という理由で殺そうとしてくるこの男のお仕置きは3巻で見ることができる。なんとこの御方、白王騎士と呼ばれる王国最強騎士団の序列4位の強さを誇る。

著 : まえはた / 蒸留ロメロ 「ニトの怠惰な異世界症候群」 3巻 より

「ギザ歯」で「序列4位」で「ヒャッハァァ」はもうイキリそのものでしかない。イキリという概念が自我を持っただけの存在だ。

レイドは強い奴と戦いたい属性のキャラだ。なので、一見強く見えない政宗ではなく、この時連れていた仲間にイキリムーブをかましていた。しばらく激しい戦闘を繰り広げていたが、横槍が入ったりしたせいで、ついに静観していた政宗にケンカをふっかけてしまう。

著 : まえはた / 蒸留ロメロ 「ニトの怠惰な異世界症候群」 3巻 より

ファンタジー版の吉本新喜劇があったら間違いなくエース級の煽りである。もはや尊い。レイド尊い。そして彼は口だけでは飽き足らず、ついに手を出しまう。

敵かどうかなんてどうでもいい
やべえ奴らは今のうちに始末しておいたほうが
この国のためだろうが!

レイドは腐っても白王騎士だった。国のために声を張り上げる。
そして大きな鎌を振りかざし、勢いよく政宗に切りかかった!

著 : まえはた / 蒸留ロメロ 「ニトの怠惰な異世界症候群」 3巻 より

ワンパンでした。
お疲れさまです。えっと、序列4位さんでしたっけ?
100点のやられっぷり、ありがとうございます。

最後に

ちなみに、憎き女の召喚者アリエスたちへの復讐は6巻で描かれている。

爽快でもあり異常でもある演出でしっかり復讐は果たされる。待っている読者を裏切らない展開になっているはずだ。果たした直後の表情や葛藤も複雑な感情が入り混じっていて面白い。

今後も買い続けよう。

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